SEIKO Radio Control Transistor Clock

August/2018


「SEIKO Radio control Transistor Clock」 を快適に動作するよう改造します。

ラジオコントロールと言ってもイマドキのJJYなんか無かった時代、AM放送NHKの「ポッ、ポッ、ポッ、ピーン」を受信して時刻を合わせる方式です。
この時計は昭和44年(1969年)グッドデザイン賞を受賞したTTR-903です。

当初は調整で何とか動いていましたが最近時刻を合わせなくなりました。

原因は
1、時計のラジオ性能があまり良くない。
2、我が地域の雑音等でトーンデコーダーがうまく反応しない。
3、電池の消耗。
AM受信部は旧式の6石トランジスタラジオです。最近のラジオで普通に聞こえる放送でも、こいつは苦労します。
また、我が家は高層ビル等で電波状態が悪い事に加えてAM放送帯に雑音が覆いかぶさって来ます。
なのでアンテナを伸ばすと逆に聞こえ難くなります。
そして、極めは電池が少しでも消耗すると、ソレノイドを十分に駆動できなくなる事です。そうなるとソレノイドへ通電されっぱなしになり、さらに電池が消耗します。
説明書では「電池は5個とも1年ごとにとりかえてください。」とありますが、電池が少しでも消耗すると動作不良になる事が解っていたのでしょうね。
少し高価ですがアルカリ電池を使った方が長持ちするでしょう。

それでは改造致します。


第一段階:トーンデコーダーのみを改造する。

実際のラジオは雑音を拾いながらもちゃんと鳴っています。
また時計合わせのソレノイドを駆動する機能も働いています。
それならトーンデコーダー部分だけ改造すれば良いのです。

訂正:IR3N05にピン1に繋がる0.47μFを4.7μFに、ピン2に繋がる2.2μFを10μFに読み替えてください。

図は「IR3N05」というトーンデコーダーICを利用して880Hz「ピーン」を抽出する回路です。
これだけでオリジナル基板の約半分を占拠しているトーンデコーダー部分を肩代わりできます。
ちなみに別のトーンデコーダーICの数値もお知らせしておきますので手に入るICで試してください。


トーンデコーダーのみの基板

さて、装着。
+6Vは④へ接続。全体がプラスアースの構造になっています。
-は⑤へ接続。6時57分及びモニターボタンを押した時に通電されます。
INはスイッチの①に接続し、緑のコードは外します。
OUTは③に接続し、黄のコードは外します。ここに繋ぐと簡単な遅延回路が付いていますのでソレノイドがカチカチ誤動作するのを和らげる事ができます。
なお、③は表面から見るとシリコンダイオードのカソード側端子です。


880Hzは密林(解る?)の信号発生器キットを購入製作し、周波数の測れるテスターで校正しました。


調整は時計部ラグ版の⑥の上2か所をワニ口クリップ等でショートさせると時計の6時57分と同じになります。
モニターボタンを押してもラジオが鳴るだけで基板は動作しません。
880Hzの信号を0.1μF程度のコンデンサを介して②と+6Vに接続、LEDが点灯するようR(5KΩ)を調整してください。
この時のソレノイドは機械的ロックが外れていませんので完全な動作ではありません。
その後880Hzを外して実際の放送を受信し、入力レベル(5KΩ)を調整してLEDが時々わずかに点滅するぐらいに調整。
次に出力レベル(1KΩ)をソレノイドが異常に動かないレベルに調整。
最後に実際の動作チェックを行いますが、例えば5時57分であっても時計を6時57分に合わせてNHKの時報を受信して確認してください。
結構微妙なのでしっかり合わせてください。

結果は良好。
7時の時報でソレノイドがカチンと動き、時計を合わせました。
しかし、調整がかなりシビアな様で、置き場所や何かの影響で、7時になっても無反応な時もあります。
それと、恐らく電池がもっと消耗すると動作しなくなるでしょう。


第二段階:全部入れ替え

AM放送は我が地域では雑音が邪魔なので出来るならFM放送のNHKで合わせたいですね。
また、「IR3N05」は880Hzで合わせてもその前後の周波数も通します。
ラジオから音声や音楽が鳴っている時は、880Hzとその前後の信号が混ざっており、基板に簡単な遅延回路があるのですが、時々ソレノイドが動作しない程度の電流が流れます。
このあたりの調整はかなり微妙なもので、少しずれるとソレノイドが時報以外で誤動作したり、逆に時報が鳴っても動作しなくなります。

そういった理由からこの際なので全部改造してみようという事になりました。

訂正:IR3N05にピン1に繋がる0.47μFを4.7μFに、ピン2に繋がる2.2μFを10μFに読み替えてください。

※上記回路は後記するTTRZ-911を改造した(多分)完成形ものです。
※リレー部は2SJ681を使いました。

ラジオは手元にあったFMも受信するポケットラジオです。
そこからトーンデコーダーで880Hzを抽出し、約1秒の遅延回路を通し、パワーMOSFETを介してソレノイドを駆動します。

配線は以下の通りです。


ラジオは3Vなので、電源は3端子レギュレーターを通しています。

※上記写真はミゼットリレーを使ってますが、最終的にはMOS FETに変更しました。


この回路での調整は大雑把でも大丈夫です。
第一段階で「LEDが時々わずかに点滅するぐらい」と記載しましたが、元気にピカピカ点滅していても大丈夫です。
当然次段の「ソレノイドが異常に動かないレベル」という項目もありません。

結果は・・・FM放送なので雑音の無い信号を受信している事でしょうが、トーンデコーダーの性能が良くなっているので変化を感じられませんでした。
元々の基板でAM放送が受信できるなら、そこから信号を取ってあげた方が時計の将来にも良いかも・・・・・・・・。

・・・・古いゼンマイ時計のメンテが面倒だと言ってクォーツユニットを移植する様な罪悪感を感じます。


第三段階:究極の改造(見た目を気にする用)

これらのノウハウを評価反省しつつ、TTRZ-911を改造しました。
今回はオリジナル基板のラジオを利用してその後段だけを追加しました。
回路は「第二段階」を使用し、接続は「第一段階」を参考に、OUTをソレノイド⑥に接続してください。

改造のポイントは「ソレノイドを駆動する電圧降下を如何に少なくするか」という事でしょう。
IR3N05の出力はTTLレベルなので次段への接続は楽ですが、LMC555を完全に動作させるには安定した出力が必要です。
時報の880Hzにできるだけ正確に合わせてください。AMラジオの雑音が気になりますが、ちゃんと合わせればIR3N05の880Hz抽出能力はとても優れています。
また、このソレノイド、6Vからちょっと下がると完全に「カチン」と動作しなくなります。
オリジナルの基板でも動作不良の原因は回路ではなくソレノイドの動作が渋くなっているだけかも知れません。

当初ソレノイド駆動に4Vミゼットリレーを使いましたが、ミゼットリレーを駆動する所までに4V近くまで電圧降下していてうまく動作しませんでした。
次にリレーの代わりに2SA1328を使いましたところうまく動作するようになりました。ちなみにオリジナル基板は2SA16と2SB156のダーリントン接続です。
ここで気を良くして最終兵器、パワーMOSFETの2SJ334を採用しました。これならソレノイドへの電圧降下を極限まで減らす事ができます。
今回手持ちの2SJ334(On抵抗0.029Ω)を使用しましたが、2SJ681(On抵抗0.16Ω)程度でも大丈夫です。

TTRZ-911の内部にホットボンドで固定しました。
これでオリジナルにちょっと改造基板が乗っている程度なので、裏蓋を開いても言い訳出来そうv。

7時の時報とともに「カチン」とアナログチックに時刻修正すると、暖かい気持ちになるのは私だけでしょうか。