バルブクリアランスを調整する

気温20℃、天気の良い日曜日。かねてから気になっていたバルブノイズに挑戦します。
そもそもバルブクリアランスはどれぐらい必要なのかを数値的根拠を基に割り出そうと思いました。

ものすごく自己中心的なのであまり真剣に読まないで。


昔々の物語。六宝が入り浸っていたバイク屋さんはシクネスゲージなんか使いませんでした。
しかもエンジンを熱くして来いと言うのです。
ヘッドカバーをはずすとおもむろにエンジンをかけ、バルブがガチャガチャ動いている中で調整します。
でも、調整してもらうとエンジンが見違えるように静かになります。
バイク屋さん曰く・・・
「こんなんええ加減でええんやで。ほらロッドを指でこすったらくるくる回るやろ。これがあたってない証拠や。」
後で隙間を見ると、狭い!。
その後も不都合が出なかった所を見ると、バルブクリアランスは奥の深〜い調整かも知れません。

本来は、上死点(S)位置で、シクネスゲージをロッカーアームとバルブの間に差し込んで、ゲージがすぅ〜と通る様調整します。
気温20度で、吸気側0.15o排気側0.20oが推奨データですが、六宝の合わせ方が悪いのか、規定通りに合わせると、結構メカノイズが大きくなります。
隙間を小さくするとメカノイズも小さくなるのですが、どれぐらいが適当なのかわかりません。
この隙間は、熱膨張でバルブを押し下げてしまうのを避ける為に開けるもので、あまり狭くするとバルブを突き上げてしまう事になります。
ここではバルブクリアランスの根拠なるものを考察してみます。

●根拠1、熱膨張について
エンジンに使われるスチール材の熱膨張率は約12×10-6/℃です。
タイミングカムからバルブまでの距離を300ミリ、温度上昇を50℃と仮定すると
  12×10-6×50×300=0.18o
となります。
つまりエンジン内の温度が70℃では、計算上正規通りの間隔でも吸気バルブは突き上げ状態になっているという事です。
これで行くと多少メカ音が気になっても、広めの隙間で合わせるのが賢明の様です。
が・・・しかし。
ここにもう一つの要素が考えられます。

●根拠2、弾性係数について
金属は硬いものと思っていますが、実は結構柔らかいのです。バネなんかはぐにゃっと曲げてもびよ〜んって戻りますね。
それと同じでぎゅっておさえると縮むのです。
鉄の縦弾性係数は約20×10sf/o2です。
ロッドの断面積を22o2、長さ300o、そこに100sの加圧があったとすると
      100×300  
     20×103×22    =0.068o
つまりロッドを押す力が100s以上ですとエンジンが70℃になっても熱膨張と差し引きすると、バルブは突き上げないという事がわかります。
動的圧力でバルブを押している事を考えると100s程度は充分加圧されている事が予測されます。

●結論?
高速回転時の高温状況ではバルブは弾性係数で縮んでいるので突き上げないし、速度を落とすと急速に冷えるので熱膨張が無くなり突き上げしない・・・と無理に結論づけました。
実際はロッドやバルブが何℃になっているのか、また何sで突かれているのか測定していませんので結果としては随分現実とかけ離れているかも知れません。またシクネスゲージの測り方も、「スッと通る」から「少し引っかかる」まで、かなりの差が出ます。
バイク屋さんの「こんなんええ加減でええんや」の言葉が妙に納得できる状況です。
難しい数字を振り回してみましたが、結局経験がものを言う世界でした。真剣に読まれた方々、ごめんなさい。

●それでも調整する
こんな状況でも小心者六宝は、とりあえず数値が欲しかったので「スッと通る」状況で吸気側0.13o排気側0.18oに調整し様子を見る事に致します。
まず吸気側、ゲージの厚みを0.12oにして隙間に挟み、ぶら下がった状態からアジャスターをゆっくり回してゲージが落ちる時点で止めます。この状態でロックナットを締めますとちょうど0.13o程度で落ち着くようです。同じ要領で排気側も0.17oで調整します。
メカノイズは小さくなりました。暖まった状態でもロッドがくるくる回りますので突き上げてはいないようです。

●お役立ち情報
バルブクリアランス調整は、何も20℃の時を選ぶ必要がありません。上記の計算式を用いればその時の気温で逆算できます。
例えば気温が30℃の真夏の場合は10℃高い訳ですから
 12×10-6×10×300=0.036o
つまり20℃の時0.2oで合わすのなら30℃の時は0.164oで合わすのです。
タイミングカムからの距離を自分のバイクに合わせて計算して下さいね。