レギュレーターの話題

R26が走行途中から、チャージランプが灯りっぱなしになりました。
とりあえずバッテリー上がり寸前に帰宅はできましたが、レギュレーターの不調で全く充電していないようです。
この部品はレストア中、絶縁不良と診断されいつかは壊れると覚悟していたところ。
ここは一つ分解掃除をする事に致しましょう・・・。


 調整には5V〜15Vぐらいを連続可変できる2A程度の電源及びテスターが必要です。
※六宝は数値的な根拠を持っていません。従ってこの記事の内容は全くの独断です。もし間違っているようならご指摘ください。
 

○分解前に動作を確認する
 このレギュレーターは一つのソレノイドで2段階の動作をさせています。
 カットアウト部はONが6.6V、OFFが6.2V。ボルテージ部はON/OFFとも7.6Vでした。カットアウト部はONした後、別のソレノイドが働き、ダイナモの電圧が6.2V程度になってもON状態を維持するようになっています。これはアイドリングの時でもエンジンが動いていればチャージランプが灯らない様にする心憎い設計思想なのです。この設定がバッテリー電圧より低いと、エンジンを止めてもスタート部が切れずチャージランプが点灯しなくなり、加えて常に電気が逆流している状態になります。
 始動後ダイナモの発電量が9.6Vになった時(負荷が無いので簡単にこの電圧になるが半端整流波なので実行電圧は6.8V)、カットアウト部とボルテージ部が同時にONします。しかしすぐフィールドコイルの電流が制御されるため、6.6V以下に落ちます。その後発電量が6.2V程度になってもチャージランプは点灯せず、又回転が上がっても最高7.6Vの発電を維持する事になります。

○調整する
 分解し、油脂分をガソリンで取り除きます。次にポイントを600番ペーパーで磨いた後1000番ペーパーで表面を整えます。その後、きっちり取り付けます。
 最初に写真Aをマイナスドライバーで廻し、ボルテージ部の接点がONの時1o程度動くように調整します。次にソレノイドの接地線(写真で見えない)とカットアウトのターミナル(写真のD、回路の51)に電源をつなぎ、リレーを指で押したり放したりしながら電圧を可変させ、リレーが動作状態になる電圧をチェックします。これがカットアウト電圧です。組み付けさえ間違いなければ何もしなくても多分合いますが、大きく違う場合はCをペンチや小さなハンマーで物理的に曲げて、カットアウトを6.6Vに合わせます。次に結線を接地とフィールドコイル側(回路の青、橙)に変えてボルテージがON/OFFする電圧をチェックします。これがボルテージ電圧です。Bを6oスパナで廻し、ボルテージ部が7.6VでON/OFFするように調整します。尚、回路図の「POINT」部に10Aのダイオードを入れる事でカットアウトをおおざっぱに設定しても逆流を阻止できるようになります。ダイオードは多少発熱しますので一方を出来るだけターミナルに近い所に、もう一方を太いコードで結線する事でターミナルとコードが放熱器代わりになります。
 最後に実際に装着して再調整し、AとBをネジロックかエナメル系塗料で固定します。

○今回の診断
 不調の原因はポイントの荒れと油汚れでした。ポイントカムの潤滑用に鉱物油なんかを塗布しますが、これは所詮「油」なのでわずかながら高温で揮発し低温で凝固します。これがレギュレーターやダイナモに付着し、故障の原因を作ります。ポイントが荒れている場合、その凹部分に油が凝固し接触不良を起こします。また、凝固した油に金属粉が付着すると、絶縁不良を起こします。R50のポイントケース内は広く換気されていて快適なのですがR26のケース内は狭く密閉されていますので故障を起こし易そうです。
 間違ってもレギュレーターに油を注すなんて事はしてはいけません。また、ポイントカムの潤滑は現在高性能なシリコン系グリースがありますのでこれを使いましょう。

○追伸
 六宝のR26はアイドリングが低すぎるのも原因の様ですが、アイドリングでチャージランプを完全に消す所まで追い込めませんでした。恐らくエンジンの振動が影響しているのでしょう。「アイドリングでも灯らない」ではなく「アイドリングでは灯り700rpm程度で消える」という判断が良いと思います。
 それから、こんな事情なのでダイオードは偉そうな事書いておきながら結局付けていません。

R26用レギュレーター 何処へ行く気だ  おい六宝!
BMW機械式レギュレーター回路図
参考・・・R50に付いているレジスターはフィールドコイルとボルテージ部の間からシャシーにかけて接続されます。

六宝的レギュレーター考

 古い車に愛着を持つ人は、なるべく多くのオリジナルパーツで維持したいと思っているはずです。しかし電気系に関しては今の技術が遙かに優れており無理にオリジナルにこだわらない方が良いと思います。各部スイッチの耐久性とか電線の内部抵抗や絶縁性にしても比較の域ではありません。特にイグニションとレギュレーターは、現在すべての車が電子式を採用している様に、正確で耐久性があり、しかも安価です。また、こちらの方がダイナモにかかる負担が少ないので高価なダイナモを守る意味でも電子式の方が有利と言えます。
 近い将来、機械式レギュレーターは芸術品として博物館の陳列台に飾られることでしょう。


・・・と言いながら6Vにこだわる六宝 筆